Column / Direction

【倉金Vol.1】共楽

2026年9月24日·執筆 竹野·Director 倉金·10 min read

北千住に店を構えて3周年となった絲間。今回は2025年より絲間に在籍する倉金による記念Directionの振り返りをお届けします。

竹野: 今回の撮影は同行出来なかったから、実際どういう感じで撮っていったのか気になる。 倉金: 朝に喫茶店に行って話して、そのまま撮影に行きました。今回はスタイリングを全部決めてから行ったわけじゃなくて、服だけ持って行って、モデルの2人に一回全部見せたんです。「どれ着たいですか」って。 竹野: 結構、接客スタイルなんだね。 倉金: そうですね。「どれがテンション上がりますか」って聞いて、反応がある服を着てもらう。もちろん、そこから僕が手を加えたところもありますけど、基本的には服を見たときに「お、いいね」ってなった人に着てもらおうと。 竹野: こーまらしいね。 倉金: 今回は絲間で一度もお願いしたことのないモデルの方々にお願いしたので、今までとは違うテイストをその場の空気で見た感じ。ですね。

即興調理

竹野: じゃあ、実際に写真を見ながらいこうか。お気に入りはどれ? 倉金: スタイリングで言うと、PRO CLUBの7XLのTシャツとか。 竹野: ああ、これね。いいよね、これ。 倉金: これは、僕が女性だったらすごくしたいスタイリングですね。もともとは男性で撮ろうと思っていたんですけど、カメラの影感というか、コントラストをすごく出したかった。女性の身体に生地が乗ることでドレープができるので、そのドレープを出したかったんです。 竹野: ここにLevi's 501で合わせたのもいいよね。ショーツにしたり、ルーズなシルエットにしたりしがちなところを、バランスの妙を突いてる気がする。あとさ、今回スカーフも結構使ってるよね。 倉金: スカーフは今回、コーディネートの共通ポイントとして置きたかったんです。ベンチで撮ったところでも2人ともスカーフをつけてもらっていて、青とオレンジで、寒色と暖色の対比を作った。

「ユニット」として撮る

竹野: この2人を一緒に撮っている写真もすごくいい。こういう、2者を捉える写真って絲間ではあまりやらないじゃん。何をきっかけにこういう写真になったの? 倉金:明確なインスピレーションがあったわけではないですけど、すごくユニット感があったんですよ。だから「あ、なんかこういうの撮ろう」って。 竹野: なるほど。今回のスタイリングを見ていると、すごく絲間にコミットしているというか、アジャストしている。でも、俺がやるスタイリングとはちょっと違う。写真も、俺がやりそうだけどギリギリやらないラインにある。そのバランスが面白いと思う。 倉金: うん。 竹野:絲間を軸にこーまのエッセンスが入ってて最高だよね。

ナイスな塩梅

竹野: このミチコのエプロンシャツとボンテージもいいよね。個人的には今回のレディースルックの中でも、かなりリアルクローズとしていいスタイリングだと思う。 倉金:このボンテージって本来はゴスとか、そっち系の服っぽくて。でも、ボンテージというには縛られている感じが少なくて。なんか、解像度の低いパンクみたいな感じがすごく好きだった。 竹野: 好きなジャンク服? 倉金: 好きなジャンク服。

特異なアイデア

竹野: 個人的メイン。 倉金: はい。 竹野: 1890年から1910年の間に作られたアンティークスモック。 倉金: はい、はい、はい。 竹野: これはね、写真として構図が完璧というか。 倉金: うん。 竹野: この間も少し話したけど、これグリッド線引くと左右がちょうど均等に空間があって、その中心にね、モデルと木があるようになってて。 倉金: うん。 竹野: で、その人、その本体、モデルの被写体を囲むところにちゃんと木が来てるから、これ余白でもいいんだけど、木があることですごい際立ってるというか。 竹野: 絞って着るのいいなって。 倉金: うん。なんか、シャツワンピ、ワンピースじゃないですか。 竹野: ま、言ってしまえばね。 倉金: なので、ウエストマークを、ま、今回は無理やりネクタイで。 竹野: あ、ネクタイなの、これ? 倉金: ネクタイを、ま、改造してるコルセットみたいにしてます。 竹野: やば、全然わからんわ。これコルセットかと思った。これネクタイなの? 倉金: ネクタイなんですよ。 竹野: やば。あ、よく見るとネクタイだね。 倉金: そうなんですよ。 竹野: 全然わかんなかったわ。 倉金: なんかすごくデザインを聞いてるように見えるんで。 竹野: うん。 倉金: ネクタイおすすめなんですけど、ネクタイでウエスト作って、絞ってますね。 竹野: 恐ろしっ。

不思議なLevi's

竹野: このEuro Levi`sのウエスタンヨークのトラッカージャケットも、めちゃくちゃいいよね。 倉金: これ、めちゃくちゃ好きです。ブラックで、リーバイスで、ユーロで、丈が短くて、ウエスタンヨーク。すごくかっこいい。 竹野: よく見るとかなり変だよね。ユーロリーバイスらしい形ではあるけど、ウエスタンヨークあって。でもなんか身幅大きいし。 倉金: 面白いですね。 竹野: これは違和感がじわじわ来る。 倉金: ズレですよね。 竹野: きた。 倉金: そう。 竹野: きました。 倉金: いやーきましたね。 竹野: きちゃったんだね。 倉金: 「ズレと違和感」っすね。まさに。 倉金: 本当は、ハイウエストでツータック、裾幅が広いパンツが好きなんです。今回はそれを用意できなかった。ロカビリーとか、ちょっとワルっぽい感じの色が入ったパンツのシルエットが好きなんですよね。 竹野: こりゃ。まあ。 倉金: 僕はシド・ビシャスみたいな、ちょっとワルっぽい雰囲気。クラシックな要素もあるけど、少し悪い感じが好きです。

竹野: 甚五、ごめんな。

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写真の課題――「カメラと対話する」

竹野: 今回、もう一つ課題があったよね。写真。 倉金: そうですね。「カメラと対話する」というのは、一つ頭の中に入れていました。 竹野: いつものD5100。 倉金: なんか、カメラを全然生かしきれてないなって感じました。 竹野: 具体的には? 倉金: 単純に自分のスキルがないというのもあると思うんですけど、ブレとか。あと、こっちが求めているものが、シンプルに出てこない。目で見て「ここ切り抜きたいな」と思ったものが、そのまま写真にならない。 竹野: 目で見えているものと、カメラから出てくるものの間にズレがある。 倉金: 空気感がいまいち伝わらなくて。 竹野: このカメラって、自然光とか影とのコントラストに強みが出る。らしいよね。どこでも同じように撮れるわけじゃなくて、むしろ、このカメラを生かすことを前提にロケーションを考えなきゃいけないんだよね。 倉金: だから、どうせ使うんだったら、こいつを生かそうと思って使ってみたけど。ただ、それにはまだ修行が足りない。 竹野: 逆説的なアプローチだよね。 倉金: やっぱり難しい。型落ちカメラを使うって、時間を無駄にする覚悟を持ってないといけないと思うんですよ。 竹野: まあ、それはそう。 倉金: だったら最新のライカを買ったほうがいい。 竹野: まあ、それもそう。 倉金: このカメラを使うなら、服そのものより、写真として成立させないといけない。 竹野: 難しいよな。

納得いかない

倉金: 今回、写真を見て、「カメラを勉強しなきゃいけないな」って思った。これ、1年前の自分だったら絶対言ってないんですよ。 竹野: 確かに。 倉金: 次回分、自分がディレクションした撮影があって、それが個人的にはものすごく良かった。だから今回、それに勝ててないなって思った。でも、それって逆にすごくいいことだと思うんですよね。 竹野: 自分の中に「ここに届きたい」という基準ができた。 倉金: そう。納得いかないものが出てくるって、すごくいいことだと思う。以前だったら、これを出したら「やべー、めっちゃいい」ってなっていたと思う。でも今は、そうならない。ということは、自分もみんなも水準が上がったんですよ。 竹野: そうだね。 倉金: だから、今回の撮影はものすごくポジティブなんです。「まだ足りない」と思えたこと自体が、前より進んでいる証拠なので。今回、自分の中でその「うお、えぐい」が少なかったんですよね。 竹野: もっと載せれたかもしれない。でも、いろいろくぐり抜けてきて最終的に残ったのが今回の写真だった。 倉金: そうです。

「服」<「人」

竹野:服そのものじゃなくて、写真全体でアプローチするんだよね。 倉金: そうですね。服を撮るなら、例えばウエスタンヨークが面白いとか、袖口にダメージがあるとか、ポケットの形が面白いとか、そういうところを撮るじゃないですか。もちろん、着画としてはそういうものも大事です。でも、個人的には、1枚のポートレート写真みたいな感覚。あとはストリートスナップのように、その人のパーソナリティが出る瞬間を切り抜きたい。そこが、自分の強みだと思っています。 竹野: 確かに。一番ディレクションしてるよね。 倉金: そうですね。ポーズの指定もほとんどない。「ここにいてください」もない。もう「任せた」って感じ。気が抜けた瞬間を撮る。 竹野: あくまで自然な動作を空間ごと切り抜く。 倉金: そうです。空間を作らない。自然発生した空間を捉える。 竹野: 作意的なものを作り込まない。 倉金: そうですね。

「楽しむ」こともディレクション

竹野: それと、こーまがずっと大事にしていることがあるよね。「自分が楽しまないと、みんなも楽しまない」っていう。 倉金: そうですね。他の人がどうディレクションしているかは分からないですけど、僕の場合は、ほぼ遊びの延長です。飯を食って、「あー、腹いっぱいだ」「あ、パシャ」みたいな感じ。撮影も、「はい、撮るよー、パシャパシャ」じゃなくて、「楽しいね、パシャ」「楽しいね、パシャ」みたいな。 竹野: 取り逃げ的な。 倉金: そう。散歩しながら撮るような感覚です。「散歩しよう。歩きながら撮ろう」って。 竹野: 大事だよね。 倉金: そう。せっかく時間を使って、みんなに撮影に付き合ってもらっているんだから、楽しまないとよくない。もちろん、作意的な撮り方もいい。次回の撮影は、かなりそっちに振っている。でも、それは他の人がやってくれる。だから自分は、別のところをやりたい。 竹野: なるほど。それでこそ良い空間を切り抜けてるよね。 倉金: そうですね。 竹野: 今話していて思ったんだけど、服と写真って結構近いんじゃないかな。前回、甚五が「ラフな格好良さ」について話していた。決めすぎず、でもアベレージは高く。今回のこーまの写真って、それに近いんじゃないかな。日常を切り抜く。その中にちゃんと「かっこいい」がある。 倉金: ああ、そうですね。

倉金ディレクション総括

竹野: 今回の撮影を振り返ると、持っている服、持っているカメラ、集まった人たち、その場の環境。そういうものを使って、どこまで面白くできるか、という撮影だった気がする。 倉金: そうですね。 竹野: でも、その中で「もっとできた」と思えた。 倉金: それが一番大きいです。前だったら満足していたものに、今は満足しきれてない。あと暑すぎた。

竹野: 大変だけどここからが楽しみだね。 倉金: そうですね。楽しんでやる。それが一番大事だと思います。

おわりに

絲間3周年を祝して行った今回のディレクション。倉金昊馬の人柄と、意思、美的感覚が濃密に抽出された魅力的な写真が揃った。彼もまた甚五と同様に自責の念に駆られていた。ストイック。と言っていいであろう。申し分のないツールが彼の手元に渡った時、鬼に金棒となるのか。そして3周年。幼稚園生は小学生に。中学生は高校生に。月日の流れに押し流されず自分たちの出来る表現を着実に重ねていければ良いカメラに出会える気もした。

所長

竹野

絲間 / シャボ