2026年6月、埼玉県越谷市北越谷に絲間の2号店として新しくオープンしたシャボ(Shabo Clothing Laboratory)。同時期に絲間、シャボ両店の新スタッフとして加入した甚五による初Direction。今回は甚五と共にその活動を対話形式で記録。
はじめまして。甚五です。
竹野: 今回、初めて甚五くんにディレクションを任せるということで、甚五くんが最初に設定したテーマが「ズレと違和感」だったね。 甚五: そうですね。絲間に加わってから初めて、自分の感覚でレディースを含めたスタイリングを作って、買い付けからピック、撮影まで一通りやりました。最初はロケーションも考えていたんですけど、レディースのみ雨で変更になって、最終的には室内で撮影しました。
竹野: 実際に今回の写真やスタイリングを並べてみると、俺が思う甚五くんらしさがかなり出ていたと思うんだ。特に、絲間らしさと甚五くんらしさがうまく重なっているものがあった。例えば、このアクリルの半袖ニットにツータックのトラウザー。絲間と言えば絲間なんだけど、甚五くんがいるからこそ成立する、らしさが出てるよね。こっちなんかはもっと濃度が高い。AT&Tのぎちぎちサイズのスウェットを選ぶあたりも「絲間らしさ」と「甚五らしさ」がいい塩梅に組み合わさってて、個人的には最高だった。 甚五: そうですね。自分らしさって面では表現することが出来たんですけど、全体的に似通ったスタイルになったところがありました。もっと日常的な、自分が普段しているスタイルを別の形でも作れたと思います。色使いに関しては、少ない色の中でもそれぞれ差別化できて、バランスは取れていたと思いますけど、アイテムの幅はもう少し欲しかったです。使うアイテムの幅をもっと広げて、見る人にもう少しインパクトを与えたかったというのはあります。 竹野: 限られた期間の中で、ピックして、スタイリングして、撮影する。その難しさもあるよね。 甚五: そうですね。
甚五のルーツ
竹野: そもそも、甚五くんのスタイルの源流ってどこから来ているのかな。例えば、このレディースの配色。レタードカーディガンにストライプのトラウザーを合わせるようなスタイルは、絲間ではそこまで頻繁にやってこなかった。こういう色やスタイリングは、いつ頃から自分の中に入ってきたの? 甚五: 青は小さい頃から好きでしたね。そこはかなり自然なものです。パンツに関しては、ハイウエストでツータック、裾幅が広いものが一番好きです。ロカビリーを見始めた頃から、昔の「ちょっとワルっぽい」格好の人が履いているパンツのシルエットが好きになりました。 竹野: ジョン・ライドン? 甚五: ジョン・ライドン。 ウエストを絞って、太もも周りにゆとりがあって、そこからテーパードしていくようなシルエット。クラシックな要素がありながら、ちょっと悪い。でも上品でもある。そういうバランスがすごく好きです。 竹野: 甚五くんのルーツを見ていくと、ロカビリー、パンク、後は和やオリエント的なものが上手く織り混ざっているように見えるんだよね。 甚五: 和とかオリエントは比較的最近ですね。でも、例えば雪駄とか、そういうものが服として最近出てきただけで、感性としては以前からあった気がします。
コラージュとしてのファッション
甚五: ファッションって、音楽をやっている人なんかを見ると、すごく個性が出るじゃないですか。ジョン・ライドンもそうだし、オアシスも、ジャミロ・クワイもそう。 そういう人たちを見て、「この人のここがかっこいい」と思った部分を、自分の中に取り入れている感じはあります。 竹野: 全部をそのまま真似するわけじゃないんだよね。 甚五: そうですね。全部をそのまま着るんじゃなくて、一部分をどう自分の中に取り入れるかという感じです。 竹野: それって、一度自分の中で噛み砕いているんだと思う。「このテイストを入れたい」と思って、そのまま持ってくるんじゃなく、自分の中で組み替えている。だからコスプレにはならない。 甚五: そうですね。
「ラフさ」

甚五: 古着屋に行くときに、あえてラフな服を軸にするのがかっこいいと思うんです。決めすぎていない、自然なところにかっこよさがある。シンプルなテーラードを着るのもかっこいいけど、そうするとやっぱり気を使うじゃないですか。 竹野: 自然体でいることが大事なんだ。 甚五: そうです。アメカジとかヴィンテージとか、そういうジャンルに自分を固定する必要もないと思っていて。そのときのシチュエーションに合わせて、TPOを考える。全身スウェットでもいいし、ドレスにスウェットを合わせてもいい。重要なときにはちゃんとした服を着る。でも普段は普段の格好でいい。その力の抜け方が好きなんです。 竹野: スウェットが好きなのも、単純に楽だからというだけじゃない。 甚五: そうですね。大学に通い始めてから、より感じるようになりました。服でテンションを上げるのもいいけど、逆に、服によって力を抜くこともできる。ファッションって、そういうツールでもあると思います。 竹野: でも、ただ雑に着ればいいわけではない。 甚五: そうですね。雑に着られる服でも、そこにはファッションとしての要素が必要だと思っています。サイズ感とか、配色とか。「楽だから着る」だけじゃなくて、楽に着られる中にもかっこよさも欲しいですね。
絲間に生まれた「ズレ」
竹野: 今回、甚五くんのDirectionで、絲間にも少し変化があったと思う。甚五くん自身はヒッチハイクしに行ってたから、接客のタイミングがあまりなくて、直接お客さんと触れ合う機会は少なかったけど、実際に店頭に並べてみると、明らかに新しい色が入ったと思うんだよね。「絲間らしくない」とまでは言わないけど、「いつもと少しテイストが違う。でもいいね」というものが増えた。今回のアイテムたちが、お客さんとお話している中でも目に留まりやすかった。実際に手に取ってもらって、気に入って持って帰ってもらったり。 甚五: まじすか。 竹野: 新しい風のようなものを感じたね。絲間におけるプレーンとかスタンダードから少しずれたアイテムたちが、かえって新鮮でいい空間になったと思う。
「ズレと違和感」とは何だったのか
甚五: 今回、最初に「ズレと違和感」をテーマにしたのは、ジョン・ライドンについて考えていたからです。 竹野: ジョン・ライドン。 甚五: ジョン・ライドン。なんであんなにカッコいいんですかね。それこそ、写真をたくさんみてたらズレというか、違和感というか。なんかすごく感じたんですよね。ただ、今回の反省として、具体的なズレを十分にモデルの方への指示や写真に的確に落とし込めなかったので、悔しいっす。 竹野: 撮影方法そのものにもズレはあったよね。普段は自然光で撮っているけど、今回は初めてフラッシュを使った。それも絲間のスタンダードから少し外れたアプローチだった。 甚五: そうですね。
自己紹介としての今回
竹野: そう考えると、今回のディレクションは自己紹介としてはかなり成立していたと思う。限られた期間の中で、買い付けからピック、スタイリング、撮影までやったし、個人的には初回でこれは素敵なんじゃないかなとも思うんだよんね。
甚五: そうですね。でも、もっとできたと思う部分がたくさんあって。でも、今回の投稿を見て、ほんの少数でも「これいいな」「こういうスタイルもあるんだ」と思ってくれる人がいれば、嬉しいっすね。 竹野:今回は自身の解釈をより深める機会になったと思うし、これを発信したことで見てくださる人も甚五くんへの解釈が少し深まったんじゃないかな。
甚五: 自分のスタイルを見せるということと、絲間の中で自分がどう存在するかということは、別じゃないのかもしれないですね。 竹野: そうだね。
おわりに
甚五による今回のテーマ「ズレと違和感」はスタイリングによるズレと違和感、写真によるズレと違和感の2つが成立したときに、テーマを完遂したと言えたのだろう。スタイリングにおいては、自己に秘める配色やシルエットの独特なセンスを組み合わせ成立させた「甚五らしさ」を絲間という箱の中で違和感とズレのようなものを発揮できたと言える。一方、写真においては納得のいくアプローチが出来ず、次へのテーマとなった。自己紹介としてはスタイリング、撮影、今回の記事をもって満点の表現と言える。
過程を愉しみ、結果に満足しない姿を見て、今後の甚五に益々期待を寄せる一方で 私自身そして絲間チームに大いなる刺激を注入したことは間違いないといえるだろう。
Direction
スタッフの世界観をより濃密にテーマを設定した上で アイテムのセレクト、スタイリング、撮影まで全てを手掛ける活動